多摩蛾廊

ヒメサザナミハマキ
Acleris takeuchii


成虫


実物大
x1 <23.7mm>

ヒメサザナミハマキは変異と類似種の多いAcleris属の1種であるが、富山県産蛾類博物館にある「顔が茶色い」ということと、同図鑑とみんな蛾の写真から判断した。DMJにある顔の白いものは別ものと考えた。

年2回の発生で、成虫は夏型が6-7月に見られ、越冬型は10月初旬あたりから見られるようだ。夏型はおおむね図1のような感じで、そんなに変異はなさそう。越冬型は変異が激しく、さざなみ紋があるタイプ(図2の右側2枚)と無いタイプ(図2の左側2枚)の2型ある。色も白っぽいのから、黒っぽいのまである。

成虫は、府中市の某公園、多摩丘陵の公園(2カ所)、高尾山(1カ所)で確認している。

みんな蛾には食草について書かれていないが、今回コゴメウツギにいた幼虫から飼育によって羽化させることができた。見たければコゴメウツギ周辺を探してみられよ。コゴメウツギはウツギと付いているがバラ科の落葉低木で、日のあたらない林床にまとまって生えている。夏型の幼虫巣の密度はあまり高くないようであった。

図2はすべて同じ日の同じ場所で撮影したもので、10月の初旬、林縁に多数の個体が発生していた。数えていないが30とか50とかいう単位でいた。年による違いかもしれないが、夏型よりも越冬型の方が数が多いかもしれない。

幼虫


図2の成虫を多数見た林には、林床にコゴメウツギが多数生育している場所であった。そのため食草はコゴメウツギかもしれないと思い、次の日にそれらしき蛹を2個体採集してきて(図3)、飼育ケースに入れて屋外に置いておいたところ、次の日に1個体羽化した(図4)。ただし図3の個体は羽化しなかった。

次の年(2010年)の初夏に、幼虫を探しに行き、それらしいものを4固体採集。2個体が寄生蜂にやられたが、残りの2個体が羽化した(図5,6)。

幼虫はコゴメウツギの葉を1枚全部巻く(図7)。先の方は大きく巻き、根元の方は餃子のようにぴっちりした部分がある。葉先の方を食べて、餃子部分は隠れ家となっている気がする。蛹化は別の場所で葉を2つ折りにしてその中で行うようだ(図9)。

図10、11は飼育した2個体から発生した寄生蜂の繭と成虫。成虫は繭を発見してから3日ほどで羽化した。フィールドでもこの繭はよく見られ、数がコントロールされているようである。


(余白)